* * *

黒田豪が転校してきたその日の夜、ひかるは祖母と一緒に夕飯を食べていた。

「ねえ、ひかる。

2丁目のアパートに黒田さんが引っ越してきたのを知ってるでしょ?」

そう聞いてきた祖母に、
「うん」

ひかるは首を縦に振ってうなずいた。

「今日、黒田豪くんって言う男の子が転校してきた」

ひかるがそう言うと、
「同じアパートに住んでいる高木さんから聞いたんだけど、黒田さんのところはかなり大変なんだって」

祖母が言った。

高木さんとは、祖母の友達の名前である。

「えっ?」

訳がわからなくて聞き返したひかるに、
「何でも彼のお父さんがひどい人だったみたいで、自分の借金をお母さんに押しつけて自分は逃げたんだって」

祖母が言った。
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