目の前にいたのは、ひかるだった。

「――ひかるちゃん…」

呟くように名前を呼んだ豪に、
「――豪くん、迎えにきたよ」

ひかるは潤んだ目で微笑んだ。

「ひかるちゃん、どうして…?」

「伊崎さんから話を全部聞いたの。

借金の返済と引き換えに、私と会わないって言う約束をしていたんでしょ?」

そう言ったひかるに、豪は目を伏せた。

「でも…伊崎さんが許してくれた」

豪は目をあげると、ひかるを見つめた。

伊崎が許してくれたとは、どう言う意味なのだろうか?

「一緒にいていいって、伊崎さんはそう言ったの。

自分はあきらめて、私たちの前から身を引くからって」

「えっ…?」

戸惑っている豪にひかるは歩み寄った。
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