肌
最低だと、ひかるは思った。

「豪くんのお母さんはお父さんの借金を返すために朝から晩まで働いているんだけど、なかなか借金が減らないみたいでね…。

時期外れにここに引っ越してきたのは、借金取りから逃げるためだったみたいよ」

祖母はかわいそうにと呟いて、息を吐いた。

「ひかる」

祖母はひかるの顔を見ると、
「豪くんが困っていたら助けてあげてね。

彼もつらいだろうと思うから」
と、言った。

「うん、わかった」

それに対して、ひかるは首を縦に振ってうなずいた。

豪が現れるまでは、両親を亡くした自分の方がつらいと思っていた。

しかし、祖母から豪の身の上話を聞いて、彼は自分よりも苦労しているのだと思った。

ひかるはそんなことを思いながら、夕飯を食べ終えたのだった。
< 12 / 115 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop