ひかるは目を開けた。

視界に入ったのは、見なれたリビングだった。

「――また昔の夢か…」

ひかるは呟くと、ソファーのうえで躰を伸ばした。

昨日は小学生時代の同級生で、初恋相手の豪と再会した。

彼を自宅に誘い、ナポリタンをごちそうして、一緒に後片づけをしながら積もり積もったいろいろな話をした。

「――お母さん、亡くなっちゃったんだ…」

一緒に暮らしていた母親は自分が17歳の時に亡くなったと、豪は言った。

「働き過ぎで、亡くなったんだ…」

呟くようにそう言った豪の顔は、悲しそうな顔をしていた。

昼は働いて、夜は定時制の学校に通っていた…と、豪は話を続けた。

何度か職を転々とした末にかつて暮らしていたこの街に戻り、今は長距離のトラック運転手として働いていると豪は言った。
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