「伊崎さんのお気持ちは、とても嬉しいです。

でも、こんな私が伊崎さんの隣にいるのは申し訳ないです」

ひかるは頭をあげると、伊崎を見つめた。

伊崎は驚いていると言うように、目を見開いていた。

「本当にごめんなさい!」

ひかるはもう1度頭を下げて謝ると、背中を見せて彼の前を立ち去った。

「――あっ、ひかるさん!」

伊崎の呼び止める声を振り切るように、ひかるは走り出した。

(ごめんなさい!

伊崎さん、本当にごめんなさい!

私が本当に好きなのは、豪くんだけです!

あなたの気持ちは嬉しいですが、本当にごめんなさい!)

ひかるは心の中で何度も伊崎に謝りながら、家路へと急いだ。

「――ひかるちゃん?」

その声が聞こえたので、ひかるは走っていた足を止めて振り返った。
< 46 / 115 >

この作品をシェア

pagetop