「――今日、動物園に行ってきたんだ」

そう答えたひかるに、豪は手を止めて食べるのをやめた。

「動物園?」

「うん、女友達と一緒に動物園に行ってきたの」

別に“友達”だけでよかったのに、豪に相手が“男”だと思われるのが怖かったから“女”だと言っていた。

豪に“デートに出かけた”のだと思われたくなかった。

「楽しかった?」

そう聞いてきた豪に、
「うん、楽しかった。

パンダの赤ちゃんがかわいかった」

ひかるは答えた。

「そうか、楽しかったんだ…」

そう返事をした豪は、どこか悲しそうだった。

もしかしたら、気づかれてしまったのかも知れない。

そう思っていたら、
「ごめんね」

何故だかよくわからないが、豪が謝ってきた。
< 51 / 115 >

この作品をシェア

pagetop