肌
豪は首を縦に振ってうなずくと、丼を持ちあげて親子丼をかき込んだ。

泣いているんだと、ひかるは思った。

親子丼をかきこんでいるふりをして、本当は泣いているんだ…と。

約束を破ったうえに何も言わずに自分の前から去って行ったことに、豪は罪悪感を感じていたのだ。

（今はこうして一緒に食事をしているんだから…）

ひかるは心の中で呟くと、ホウレン草のごまあえを口に入れた。

しょう油を入れ過ぎてしまったかも知れないと、ひかるはホウレン草を咀嚼しながら思った。

食事を終えて後片づけをしようとしたら、
「何か手伝うことはない？」

豪が声をかけてきた。

「えっ、どうして？」

そう聞き返したひかるに、
「ごちそうになったから、お礼に何かお手伝いがしたいなって」

豪ははにかんだように笑いながら答えた。
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