何が言いたいのか、何がしたいのか、自分でもよくわからなくなっていた。

そんなことで自分をごまかして、何をやりたいのだろうか?

「――私…」

ひかるは豪の顔を見つめた。

子供の頃から思い続けていたこの気持ちを、積年のこの思いを豪に言ったら、彼はどんな顔をするのだろうか?

迷惑だと言うのだろうか?

それとも、さっきのように“ごめんね”と謝るのだろうか?

どちらにせよ、もう自分の気持ちをごまかしたくないと思った。

「――私、豪くんが好きなの…」

ひかるは言った。

「子供の頃からずっと、豪くんが好きなの…」

これ以上豪の顔を見ることが怖くて、ひかるは目をそらすようにうつむいた。

豪は、どんな顔でうつむいている自分を見ているのだろうか?

彼が何も言わないことが怖くて、ひかるは泣きそうになった。
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