すると、
「――えっ…?」

たくましいその腕が自分を抱きしめてきたことに、ひかるは驚いて顔をあげた。

そこには、優しい眼差しで自分を見つめている豪の顔があった。

「――豪くん…?」

思わず彼の名前を呼んだら、
「――俺も」

その声が聞こえた。

「――俺も、ひかるちゃんが好きだった」

そう言った豪に、ひかるは泣きそうになった。

(豪くんが、私を好き…?)

「初めて会った時から、ひかるちゃんを思ってた。

ひかるちゃんの前からいなくなったけれども…ずっと、ずっとひかるちゃんのことだけを思ってた」

豪はひかるの顔を見つめると、
「――ひかるちゃんを忘れた日なんて、1回もなかった」
と、言った。

その瞬間、ひかるの目から涙がこぼれ落ちた。
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