「えっ?」

信じられなかった。

1回くらい、そう言う経験があるんじゃないかと思っていた。

思わず聞き返したひかるに、
「ひかるちゃんのことばかり思ってたから、他の女性に何の魅力も感じられなかったんだ」

豪は恥ずかしそうに答えたのだった。

「そ、そうだったんだ…」

「引いた?」

そう聞き返してきた豪に、ひかるは首を横に振って返事をした。

「でも、努力はするから…」

呟くように言った豪の頬を挟むように両手で包み込むと、ひかるは自分から唇を重ねた。

すぐに唇を離すと、豪を見つめた。

「豪くんのままでいいから…」

そう言ったひかるに、豪は彼女の首の後ろに手を回すと抱きしめた。

壊れ物を扱うようかのような仕草で躰が押し倒されたその瞬間、ひかるは目を閉じた。
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