「豪くん!?」

自宅の前にいたのは、豪だった。

だけども、その様子がいつもと違うことに気づいた。

「――ひかる、ちゃん…」

ひかるに気づいて名前を呼んだ豪は、痛そうに唇をゆがめた。

唇の端から、血が出ていた。

まぶたが青紫色に腫れあがっている。

たくましいその腕には傷ができて、なかには痣になっているところもあった。

「どうしたの!?」

そう声をかけたひかるに、豪は答えられないと言うように目をそらした。

「とりあえず、まずは手当てをしよう?」

そう言ったひかるに、豪は首を縦に振ってうなずいた。

豪を自宅に入れてリビングへ通すと、ひかるは救急箱を取り出した。

「ごめんね、ちょっと染みるよ?」

消毒液を含んだ脱脂綿をピンセットでつまむと、ひかるは豪の切れている唇の端をチョンチョンと押した。
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