隣の県に引っ越しをして、建設会社の現場作業員の仕事に就いて今日で2週間目を迎えた。

「お疲れ様です」

この日も仕事を終わらせると、豪は帰り支度を始めた。

「黒田、今日は早く終わったことだから飲みに行かないか?」

先輩から飲みに誘われたが、
「すみません、寄るところがあるもので…」

豪は丁寧にその誘いを断った。

「何だ、つれねーな。

と言うか、“今日も”寄るところがあるのか?」

40代のバツイチの先輩である彼はガハハと笑った。

「これか?」

彼はニヤニヤと笑いながら、立てた小指を豪に見せた。

「…そうならば、よかったんですけどね」

呟くように言った豪に、
「そうか」

先輩は何かを察したと言うように口を閉ざした。
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