再見

Ⅲ

―告別式はしめやかに行われた。
「しめやか」という言葉についてしかし祥子は考える。
目の前では父を慕う人々が、涙を流し、
時には声をあげすすり泣きながら次々と、
横たわる父の周りを花で埋めてゆく。
　外はいかにも冷たい雨がぬれぬれと降り続いている。
―「盛大」だ。と祥子は思う。
その言葉を果たして葬儀に使うことが正しいのかどうかはわからないが、
少なくとも「しめやか」よりは似つかわしかった。
　目と鼻を真っ赤にし、涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにした
四十代くらいの女性にいきなり両手を掴まれた。
涙で濡れた瞳で真っ直ぐにこちらを見据え、
中国語で何かを話し続ける。
やがて隣にいたもう少し若い女性に抱きかかえられるようにして
後ろの方の席へ下がって行った。
彼女の噎び泣く声と、握られた手の熱さがいつまでも残った。