再見
畳敷きの部屋の隅では、ごく近しい人々や、
近所の人が残り、酒を酌み交わしている。
その間も、通夜に間に合わなかった人が、ぽつりぽつりと焼香に訪れ、
皆一様に黒い服装に真っ白な割烹着やエプロン姿の女たちがお茶などを運んでいる。
祥子は顔も名前も分からない人たちだ。
元気がよく、流しの方に引っ込んだ時などは軽い笑い声もするところからは、
父とは直接はかかわりがないのが感じられる。
それなのに、こうして時間を割いて手伝ってくれている。
「祥子ちゃんお友達」
なんとなく動いていたくて女たちを手伝っていると、
玄関の方から叔母の呼ぶ声がした。
「よう」
礼二郎だった。
 
 
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