再見
 よくネジに無理矢理足をかけ、礼二郎の肩に掴まるというより
背中にもたれ掛かるようにして二人乗りしたバイク。
ふざけて笑い転げながら坂を滑りおりた。
そんな何の心配も悲しみもない、
澄み切った青空のような無邪気な光景が横切る。
ほんの一月前のことなのに、ずっとずっと昔のことのように・・。
 歯を食いしばってくしゃくしゃの顔をした祥子の方は振り返らず、
礼二郎は右肩に置いた手を鞄ごと持ち上げて、
バイバイの形に左右に少し振ると、
登りきった坂の向こうに姿を消した。
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