再見
そのチーズケーキは全く愛すべきお菓子だ。
材料をざっくりと混ぜたら、後は型に流し込んで焼くだけで失敗はまずないし、
シンプルで何しろ美味しい。
簡単なのに味が『手作り』っぽくないのだ。
焼き上がりが少しひび割れたりした感じもお洒落だ。
夕方ふっくら焼き上がったケーキを見てすっかり満足した祥子は、
丁寧に薄型の茶色い箱に入れると柔らかいオレンジ色のリボンをかけた。
小さい、猫ばかり撮った写真集と一緒に、やはりオレンジ色の紙袋に入れる。
―完璧だわ。
写真集はおまけだけれどこだわった。
ケーキは素晴らしいけれど、後に何も残らないのはやっぱり少し淋しい。
礼二郎とは少し話すと、もう一度おめでとう。と言って別れた。
彼とはまだキスもしていない。
しかし祥子はそんな二人の関係を心地よく感じていた。
例えばこんな風に過ぎる誕生日。
七月の祥子の誕生日も、
学校の帰りに待ち合わせたファーストフードのお店でお茶を飲んで別れた。
この距離感は絶妙だ。祥子は星空を仰ぎながら考える。
友達は口を揃えて言う。
―そんなの信じられなぁい。
しかし祥子は満足していた。
『女の子にかまける』ことなどない礼二郎。
そんな恋人に「逢いたい」だの「もっと一緒にいたい」だの
決して言わない自分。
材料をざっくりと混ぜたら、後は型に流し込んで焼くだけで失敗はまずないし、
シンプルで何しろ美味しい。
簡単なのに味が『手作り』っぽくないのだ。
焼き上がりが少しひび割れたりした感じもお洒落だ。
夕方ふっくら焼き上がったケーキを見てすっかり満足した祥子は、
丁寧に薄型の茶色い箱に入れると柔らかいオレンジ色のリボンをかけた。
小さい、猫ばかり撮った写真集と一緒に、やはりオレンジ色の紙袋に入れる。
―完璧だわ。
写真集はおまけだけれどこだわった。
ケーキは素晴らしいけれど、後に何も残らないのはやっぱり少し淋しい。
礼二郎とは少し話すと、もう一度おめでとう。と言って別れた。
彼とはまだキスもしていない。
しかし祥子はそんな二人の関係を心地よく感じていた。
例えばこんな風に過ぎる誕生日。
七月の祥子の誕生日も、
学校の帰りに待ち合わせたファーストフードのお店でお茶を飲んで別れた。
この距離感は絶妙だ。祥子は星空を仰ぎながら考える。
友達は口を揃えて言う。
―そんなの信じられなぁい。
しかし祥子は満足していた。
『女の子にかまける』ことなどない礼二郎。
そんな恋人に「逢いたい」だの「もっと一緒にいたい」だの
決して言わない自分。