だから、笑って。
委員会が終わり、教室を出たとき、ふとスカートのポケットを触れると何かが無くなっていることに気がついた。
あ、ハンカチがない。
「あの」
後ろで声がした。
私かな?と思いつつも振り向くと、さっきの男の子がいた。
立った姿はより背が高く見えて、さらさらとした黒髪をしていた。
顔を見るといわゆる「イケメン」で、私とは別世界の人間のように見えた。
顔とスタイルが整いすぎていて、こんなに美形な男の子がこの世に存在していたんだと感心した。
「これ、落としましたよ。」
そう言ってその男の子はハンカチを少し払ってくれた。
「あっ、ありがとうございます!大事な物だったんです!」
そして私は得意の笑顔で彼に笑ってみせた。
すると、彼はなぜか悲しそうな顔をした。
目に差し込む光が、少しなくなったように見えた。
「・・・そう、よかった。綺麗な桜色のハンカチだね。はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。兄が、くれたんです。」
また、私は微笑んだ。
「そっか。じゃあ」
男の子は軽く手を振り、廊下を歩き出した。