だから、笑って。
パタン。
ドアの閉まる音が響いた。
「・・・じゃあ、やろうか。まずは返却ボックスの本を戻そう」
彼が言った。
私は返却ボックスにある本を数冊手にとって本棚へ向かった。
私は、彼に聞きたいことがある。
それは数日前に彼が言ったひとこと。
『あんた、辛そうに笑ってる。』
彼はどうして私にあんなことを言ったのか。
考えてみたけれどキリがなかった。
そして、どうもその言葉が胸に引っかかっていた。
彼をチラッと見ると、彼は黙々と返却作業を続けていた。