だから、笑って。
病院に着くなり、まだ10歳にも満たない私のことをほったらかしにしてお父さんとお母さんはリノリウムの廊下を一直線に駆けていった。
私も最大限の体力を振り絞ってお父さんとお母さんの背中を追った。
気がついたら何やら機器やベッドがたくさんある部屋の前にきていた。
その部屋からお医者さんが出てきて、お父さんとお母さんは餌に群がる獣のようにお医者さんに駆け寄った。
お医者さんとお父さんたちは何やら小声で話をしている。
私はその間、バスケットボールを片手にその部屋の中を覗いてみた。
ベッドに横たわる人。その周りにはたくさんの機器が置いてある。そして、その人へ向かって何本もの紐がつながっていた。
そして何よりも中にいるお医者さんが駆け足で移動していたり、慌ただしかったのを覚えている。