だから、笑って。
私は手を伸ばして、返却ボックスの中にある本を手に取った。
ゲーテの『若きウェルテルの悩み』という題名の本だった。
ゲーテは知っているけれど、この作品は読んだことがないなぁ・・。
「ねえ里沙、この本読んだことある?」
私は里沙に尋ねてみた。
すると里沙はまじまじと私の手にある本を覗き込んだ。
「あるけど・・。」
「どんなお話だった?」
「興味があるなら自分で読んだほうがいいわよ?面白さがなくなるじゃない。」
「ネタばらしとかではなくてジャンルが知りたいの。」
「恋愛系だよ。しかもとってもビターなね。失恋ものよ」
それを聞いた途端、私は言葉を失った。
まただ。