だから、笑って。
トントン拍子で物事が進みすぎて、泣く暇もなかった。
たった6歳の私にはあまりにも重すぎる出来事だった。
けれども、今の痛々しいお兄ちゃんの顔と、今までのお兄ちゃんとの面影がどうも重ならない。
変わらない事実に、ようやく悲しい感情が出てきて、涙が溢れてきた。
「うっ、うっ、ひび、お兄…ちゃん。」
バスケットボールが手からすり落ちる。
この部屋には似つかわしくないボールの跳ねる音がした。
涙がベッドのシーツにいくつもの染みをつくった。
お母さんも唇をきゅっと噛み締めてお父さんの裾を掴んでいた。