だから、笑って。
図書室を後にして2人で玄関へ向かった。
部活やらでもう校内にはあまり人がいなかった。
前を歩いていた間宮くんが振り向いた。
「・・・菜乃花って呼んでいい?」
嬉しさのあまりに胸がきゅんと胸が高鳴った。
「いいよ!・・・私も凜くんって呼んでいいですか・・?」
間宮くんはふっと微笑んで私の頭を撫でた。
「いいよ。あと、敬語禁止。同い年なんだし」
生徒玄関に着くと、凜くんはピタッと立ち止まった。
私は凜くんの方向に目をやる。
思い切り開いた窓からはコンクリートの湿ったにおいが漂ってきた。さっきまで晴れていた空は一転、どんよりとした雲が覆っていて大粒の雨が降っていた。
梅雨が明けたというのにまだ天気はぐずついて落ち着かない。
私はカバンの中から折り畳み傘を出した。
そして、緊張しながらも凜くんに話しかけようと決意した。
「あの、駅まで一緒に行きませんか・・?」