だから、笑って。
途端、私の小さな手に温かいものが触れた。
お兄ちゃんの手だった。
お兄ちゃんは目を半開き開けていた。
「先生!ひびきくんが意識を取り戻しました!」
近くにいた看護婦は医師を呼んだ。
お兄ちゃんは私をじっと見ていた。
私の目からはまだ大粒の涙が溢れていた。
「な…のか……。」
呼吸器の音とは違う、お兄ちゃんの声が聞こえてきた。
「な、のか…は誰…よりも…笑顔が似合…てる。」
お兄ちゃんの小さな声が私の涙を余計に溢れさせた。
「だか…ら、笑って……。泣く…な。」
お兄ちゃんはずっとずっと私の笑顔が好きだった。
私はそんなお兄ちゃんがもっともっと大好きだ。
大粒の涙を流しながら、私は笑ってみせた。
あまりにも不恰好な私の姿にお兄ちゃんはふっと笑ったような気がした。
「それで…いいんだ…よ…。ずっと、笑って…て…..」
お兄ちゃんはそこで再び意識がなくなった。
その3日後、意識が戻らないまま容態が急変して、お兄ちゃんは亡くなった。