だから、笑って。
電車に乗り、電車は次第に動き出した。
「菜乃花は何駅で降りるの?」
「私は舞矢町だよ」
「一つ向こうなんだ」
「そうなの」
電車はみるみる速度を上げ、あっという間に凜くんの駅に近づく。
今日は自分でも驚くくらいに凜くんに近づくことができた。
だからこのまま、時間が止まっちゃえばいいのに。
『次はー羽佐間。羽佐間です』
車内アナウンスが聞こえた。
あぁ、今日がもう、終わるんだな。
「・・じゃあ、また明日」
凜くんはドア付近に歩こうとした。
「待って」
私はとっさに凜くんの制服の裾を掴んだ。
自分でもとても驚く行動だった。
「あ、明日も整理あるのかな・・・?」
凜くんは目を丸くした。
そして目元を細めて笑った。
「あるよ?また明日」
彼の3度目のウソにまたしても笑ってしまった。
でも、凜くんと会えるなら、話せるならウソでもいいんだ。