愛を知らない一輪の花


「山本先生。大変ご無沙汰しております。お待たせして申し訳ありません。、、、お花の御注文でしょうか?」

深々と頭を下げる。


「いやぁ、こちらこそ、いつも良くしてもらってすまないね。今日は花を買いにきたんじゃないだ。御礼とお願いに来たんだよ。」

そうニコニコと笑顔で答えた。



「御礼と、、、お願い、、ですか?」

山本の言葉に思い当たらない蓮は、不思議そうにたずねる。



「先月、妻の誕生日だったんだ。花なんて妻どころか女性に贈ったこともなかったんだよ。いつだったか若い頃に花束が欲しいとねだられた事があってね。その時は恥ずかしいからと突っぱねて悲しそうな顔をさせた事があった。長い事苦労させて気付けば妻が40歳の節目の歳だ。感謝を込めて花を贈ることにしたんだ。」

静かに山本の声に耳を傾ける。
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