愛を知らない一輪の花

「その日、丁度仕事で駅前に居てね。ここの支店が目に入った。普段なら電話で注文か、秘書に使いにやらせるが、折角の機会だから自分で買いたいと思って店に入ったんだ。店先には綺麗な子が立って居て、初めての花屋に緊張していた私に優しく微笑みかけてくれた。そんな彼女に花束をお任せでお願いしたんだよ。すると彼女に私から見た妻のイメージを聞かれた。何故そんな事を聞かれたのか分からなかったが、太陽のような人だと伝えた。それを聞いて嬉しそうに笑い、優しい顔で楽しそうに花束を作っている彼女に見惚れてしまった。出来上がった花束に、、、カードが添えてあったんだ。」


「カード、、、ですか?」

「そう。出来上がった花束は妻のイメージぴったりの物で、彼女の綺麗な字でこう書いてあった。『白いダリアは感謝。オレンジのガーベラは西洋の花言葉で、貴方はわたしの太陽です』、、、口下手な私だが、そんな花言葉を見て伝えて見ようと思えたんだ。妻は大層喜んでくれたよ。今まで渡したどの高価な物よりもね。」




嬉しいそうに笑う顔は、まるでその日の光景をおもい浮かべている様だった。
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