愛を知らない一輪の花
その夜、本社で急な会議が決まり、透も本社に呼ばれていた。会議室にはいつもの様に蓮を始めとする各部署の部門長と各支店長、本店のスタッフが揃う。
「今日は急な呼び出しで、申し訳ない。集まってもらったのは他でもない。何年も前から平行線だった、駅前支店の斎藤百合さんについての本店の方への異動の件だ。」
しんと静まりかえる会議室。
「うちに入社して11年。知識も経験もキャリアも申し分ない。彼女を本店に異動する。」
いままでの会議は部門長達は賛成するも、肝心な本店のスタッフが顔を縦にふらなかった。それどころか何かと文句をつけて、猛反対していた。透は中立な所で、栄転という本店への異動を応援してやりたいが、本店の連中が百合を快く思ってないこともあり、躊躇していた。何より、右腕を失うのも困りモノだ。