愛を知らない一輪の花

書き終えて、時計を見た。
時刻は10時20分。
こんな時間に電話してもいいものかと迷ってしまう。携帯を握りしめ、考え込んでいると蓮が本店に顔を出す。

「あっ。社長!お疲れ様です。」


慌てて立ち上がり、頭を下げる。


「百合こそお疲れ様。今日は人間が少なかったんだって?蓑田さんにも急に出張お願いしたから、バタバタだっただろう。日報が終わったなら帰ろう?今日は疲れただろうし、百合のアパートに荷物を取りに行きがてらに食事もしよう。、、ほら、いくよ?」

優しく微笑んで、手を差し伸べる蓮。

差し出された手に、恐る恐る手を重ねた。
するとそのまま手を引かれ、蓮の体にすっぽりと収まった。ぎゅと抱きしめられ、戸惑う。

「しゃ、社長?!ここっ!、、、会社です!誰かに見られたら、、、!」



「構わない。、、、俺も今日は来客ばかりで疲れたよ。だから少し充電。」
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