愛を知らない一輪の花
緊張しながら、百合は深く頭を下げる。
通常、モール支店は5人体制だ。店番に3人に裏方作業に2人。今日は1人は親戚の不幸で急な休み、もう1人は体調不良で夕方から早退し、少ない人数で仕事に追われていた。
「ほ、、、本物ですか?!?!あの!駅前支店の斎藤百合さん?!?!」
興奮のあまり声がでかいスタッフのうち1人が百合に握手を求める。
差し出された手に戸惑いながら百合は微笑みかけながら、ゆっくりと手を握る。
「はい。本物です。影薄ぎて、もしかして透けてみてえます?ふふっ。斎藤百合です。宜しくおねがいします。」
そんな笑顔に悶絶する松井の横で園川が百合の手を奪いとり、ぎゅっと両手で握りしめた。
「はじめまして!園川ゆずです!!今日は欠勤が2人も出て、なんの嫌がらせかと思ったら、この為だったんですね?!一緒に仕事ができるなんて夢のようです!会えて嬉しいです!皆んなに自慢します!!宜しくお願いします!」