愛を知らない一輪の花

手で汗を拭いながら顔をあげる。

「こちらこそ、すみません。どうしても緊張してしまって汗が止まりません。すこしだけ休んできます。」


そういって頭を下げて裏に入っていく百合をぼんやりと見つめていた。








花の専門学校を卒業し、この会社に入った由美子の目から見てもセンスと努力はズバ抜けていて、高校を卒業してこの会社に入ってきた百合を見て、なんて綺麗な子なのだろうと思った。


どの店舗も百合を欲しがったが、本人が希望を出したのは作業場の広い、裏方業務の冠婚葬祭が主な駅前支店だった。




いつしか百合は駅前支店の女神と称えられ、百合を見たさに駅前支店に希望を出すアホな輩が増えた。
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