愛を知らない一輪の花
小学校に上がる前に親に捨てられ、自分で分かっていたのは百合という名前だけ。
高校まで小さな養護施設で育った。
この歳になるまでそれなりに恋人は何人かいたが、恋愛において何か欠落しているようで、親の愛情を受けた事のない百合には愛がなにかわからなかった。
付き合った恋人には特別な感情がわかず、相手からいつも離れていった。酷く傷ついた顔の彼を見るのがつらくなり二十代後半には恋愛する事を止めた。
そんな百合は今日も仕事に励んでいる。
駅前支店は店長、百合を含め社員が6人、パート4人、アルバイトが2人の計12名のスタッフでシフトが組まれている。
店舗開店まえの30分前には出社し
清掃業務を行なったのちに
支店長からその日の仕事内容の指示をもらう。
小売の店舗で1番規模が小さいため
お店にはスタッフ2人だけで
後は作業場の裏方の仕事だ。