愛を知らない一輪の花
結婚式当日。相良と黙々とホールの飾り付けを行う。新郎新婦、2人の門出の日にこうして花で素敵な空間作りに携える事は、本当に幸せな仕事だと思う。
愛がなにかわからない百合も2人寄り添って花に囲まれたメインテーブルで見つめ合い、笑い合う姿を見ると心が暖かくなる。
これから家族になっていく2人を羨ましくも思う。無償の愛を親から受け、またその愛を2人で育み未来へ繋げる。しかし百合自身は、愛を貰えず、また与え方もわからず、繋がらない未来に真っ暗な闇が見えた。
大きな物音で現実に引き戻された。
「百合ちゃん、大丈夫?ぼーとしてたけど。疲れが溜まってるんじゃない?顔色も良くないし。後の片付けはやっとくから、先に戻ってて?私、明日の打ち合わせしてから帰るから。」
「すみませんっっ。ではお先に戻ります。お疲れ様でした。」