愛を知らない一輪の花
本店や本社の部署に置くつもりだったが、本人の強い希望もあり、無理強いすることもできず、最近駅前に出来た支店の、1番の信頼を寄せる透の側に置いた。
美しい容姿に控えめで優しい雰囲気に誰もが見惚れる程だった。用事を見つけては駅前支店へ出向き、作業中の彼女の姿を探した。
同僚と楽しそうに談笑している姿を見るだけで満足だった。透には呆れられたが、彼女が過ごしやすい環境があれば、それでよかった。
花の色彩センスもよく、なんでもそつなくこなす彼女は、実力も伸ばして駅前支店だけでくすぶるには勿体ないほどだった。
仕事が出来れば出来るほど、仕事量は異常に増え、彼女の勤務時間表を見るたびに透に掛け合って調整させた。
これ以上黙って見ていられなくなって、本店への移動を会議で何度も上げるが、本店の連中が首を縦にふらない。いまだに平行線だ。
ラチがあかない苛立ちと親からの見合い話に焦り、忘年会を強制にしたことは少しやり過ぎたかもしれない。それぐらい余裕なんてもう無かった。