愛を知らない一輪の花
「あ、あの!社長?どちらに?!」
小走りで必死について行く百合が戸惑いながら声をかける。
しんとした客室に繋がる長い廊下で透は足を止めた。
「君はいつもそうなのか?」
ゆっくりと振り向いたその顔は、呆れているのか怒っているのか、表情からは読み取れない。
「そうといいます、、、と?」
「事務長の誘いに乗って、その後どうなるか、そんなこともわからないのか?それとも君もそれを望んだか?」
冷たい表情で見つめられる。
「私のせいでお2人が他の部署に異動だなんて絶対に駄目なんです!大人ですから、そういう事もあると分かっています。でもそれで事務長の気が済まれるならいいと思っています。」
その言葉を聞いて顔を歪め、乱暴に百合の手首を強く掴む。