初恋
先輩と出会ったのは、まだ私が入学して間もない頃だった_____
「桃〜、初めての部活だね!一緒だあー」
この子は同じクラスになってすぐ仲良くなった南 葵(みなみあおい)ちゃん。みなみって呼んでねって言われてるからみなみって呼んでる
「そうだね、楽しみだね」
このバドミントン部は男女混合で、週2しかないためとても楽である。やる気のなさが伝わってきたけどバイトと掛け持ちできてちょうどいい
ピーッ
「みーんなー、準備体操したら基礎からしよっかあ」
はーい、と掛け声をするが私はそんなものしない
みんなが基礎を学んでるうちに私は体育館のドアにもたれかかって夕焼けに染まる空をぼーっと眺めていた
「きみ、やんないの?」
(誰だっけ……)
最初に自己紹介したものの、全く興味がなくて覚えていない
「俺、3年のルイ。よろしくね」
整った顔立ちをしたこの先輩はどうやらルイというらしい。ペコっとするだけで私はあえてよろしくなんて言わない
「で、なんで一人だけここにいるの?」
「あんな弱い人たちと打ちたくないんで」
「え、ああ……そうなんだ?…桃?ちゃんだったよね。あまりに綺麗な顔してるから覚えちゃったよ」
“女たらし”
直感的にそう思った
暫くの間私が全く喋らないからか、気になったら来てね、そういって男子の輪に戻っていった。
「休憩〜!」
という言葉と同時に、みなみが私の元へ倒れ込んできた
「もーもー、つかれだぁーー、桃ったらなんでやんないの〜」
みなみの言葉など耳に入ってこなくて、もたれかかっている体育館のドアをぼーっと眺めていた
「………大したことないな」
先輩たちも、ここの人らみんな男子も含めて
ふとそう思った
「ちょ、も、もも!声大きい!」
「本気でやってんのかな」
すぐそこにいる先輩などには聞こえる程度に言ったからか、みなみが慌てて止めに入る。
ふと目の前に大きな影が現れた
「あのさぁー、もも?ちゃん?だっけ。そんなに言うなら、打つ?」
女子の先輩たちが腕を組んで仁王立ちしていた。
キャハハッと笑いながらラケットをくるくる回している
ズボンの色からして、おそらく2年生だろう
「いいっすよ」
「え、ちょ、もも!やばいって!!」
はあ?とでも言いたげな阿呆面下げている女子の先輩たち
だってその為にわざわざ大きな声で聞こえるように言ったんだから
「15点先取で」
カバーの中から金色に光るラケットを取り出す
(とっとと終わらせよ、)
すると、部長候補?らしき人が睨みをきかせながらも体育館シューズをキュッ、と鳴らしながらコートに向かった
「フッ、スムーズに動いてくれて助かるわ。けど馬鹿ね、入学早々大恥かくわよ」
「サービスハンデを与えましょう。」
(あんたの言葉なんか聞いてる暇ないっつーの)
面白そうなのが始まってる、と男子のバドミントン部も野次馬の様に集まってくる
「は?何を言ってるの?キャハハッなんで初心者にハンデなんか与えられなきゃなんないのよ。後悔するわよ」
「口動かさないでさっさと手動かしてよね」
チッ、と舌打ちをしてわざと挑発させる
周りがざわついてきた
そして3年生の先輩たちも心配そうにこちらを見ている。中には先程のルイと名乗った先輩もいた
(へぇ、面白い子が入ってきたなこりゃ)
「絶対後悔させてやるわ」
ポンッ
私がシャトルを渡したのを合図に試合が始まった