初恋




「15-6、ゲーム挨拶をしてください」




もちろん、圧勝。
女の先輩たちは悔しそうな表情でこちらを睨んでいる
一方、男子の先輩たちや同級生たちは信じられないと言った表情でこちらを見ている




「も、もも!?ちょっと、なになに凄くない?!」




「ふつーだよ。てかもー帰ろう」





来た道と逆方向に足を進める
後ろからみなみの呼び止める声が聞こえたが、そのまま部室に戻る









(次の部活行ったらみなみには申し訳ないけどバドミントン部はやめよう)







外に出ると夕焼け色の羊雲が綺麗に映えていて、青い空なんかこれっぽっちも見えなかった





“ つまらない ”






これがバドミントン部への最初の印象だった







ガチャ



「ハァハァ、ちょっと桃ってばぁー、置いてかないでよ~」




ドアの開いた音の先には息を切らしたみなみがいた





「あ、ごめんね、」






「いーけどさ、それより!桃って初心者なのになんであんな強いの!」





「別に普通だって。周りが弱すぎるんだよ」




それと誰も初心者なんで言ってないけどね、と小さい声で付け足したが聞こえるはずもなく



「羨ましいなあ、顔もよくてスポーツもできるって。男子のバドミントン部なんてみんなメロメロだよ」







「そんなことないって、みなみの方が可愛いし」




うん、女の私から見てもこの子は可愛いと思う。
奥二重には見えないくらいのつぶらな瞳と小さく整った鼻、ぷっくりとした唇
入学したての時男子から結構評判高かったような






「知ってる~~アハハッ」





「………なんかうざ」



お互い笑い合い、一緒に帰った






「じゃあ気をつけてね!また明日!」





「うん、また明日ね」





バイバイ、と手を振り私だけがバスに乗る
みなみは地元がここみたいだ。私は結構遠い町に住んでいるため、電車とバスで通っている




窓ガラスに映る自分を見て、思わずため息がこぼれた







ガチャン





「ただいま」




散らかった靴がたくさんある。たぶん美優(妹)
が友達をあげているみたいだ



「おかえり。どーだった学校」





「つまらない、部活」



本当につまらなかった。あ、でもあの先輩達の悔しそうな顔は面白かったな



「あらそ?随分とニヤけてるけど」






「あ、まじで。ちょっと面白いことがあっただけだよ」




慌てて口元を隠し自分の部屋へと向かう。
明日も学校か、そんなことを思いながらも今日の一日を終えた




< 3 / 4 >

この作品をシェア

pagetop