友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
「ねえ、待って!」
のぞみは居酒屋の外に走り出た。
排気ガスが立ち込める大通り沿いの道。
前方にコートを手に持つ琢磨の姿が見えた。
のぞみは走る。
「待ってってば」
やっと追いつき、袖をぐいっと掴む。
「どうしたの!?」
のぞみは琢磨の顔を覗き込んだ。
琢磨の目はうつろで、どこか怯えているようにも見える。
何があったんだろう。
「なんか言ってよ」
「……別に」
琢磨は首を振る。
のぞみは腹が立ってきた。
また何も受け付けない、あの状態だ。
「もうっ。ややこしい男だな!」
のぞみは琢磨の背中を力一杯平手打ちした。
「気晴らし、いこ」
のぞみは言った。