友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

「ワンピースのフィギュア、とってよ」

のぞみはガラスケースを指差した。

「あれ、無理じゃん」

琢磨はガラスケースに顔を近づける。
明らかに高額商品で、ケースの後ろ側に鎮座している。

「だって400円でとれるかも」
「無理だって。欲しいなら、おもちゃ屋行けばいいじゃん」

琢磨の声が、少し回復してきた。

「おもちゃ屋だと4000円するもん。すぐ『無理』っていうの、よくないよ」

のぞみがいうと、琢磨は少し笑う。

「のぞみがそれ、言うの? 基本、全部後回しじゃん」
「後回しにしても、追い詰められればやるでしょ。無理って言わない」
「へえ」

琢磨はそう言うと、小銭を取り出した。

「じゃあ、どうぞ」
UFOキャッチャーに入れる。

のぞみは「いいよ」とレバーを握った。

クレーンはフィギュアの上で止まったが、箱をかすって終わり。

「ああいうのは、掴むんじゃなくて、落とすんだよ」

琢磨がレバーを奪う。

でもなかなか上手くいかない。
のぞみと琢磨、交互に小銭を入れて何度もトライした。

「やばい、もう2000円いく」
のぞみは眉をひそめた。

「ほら、言っただろ、無理だって」
「次できるかも」
「もっと、賢く生きろよ」
「うるせ」

のぞみは声をあげて笑う。

結局何もゲットできず、二人でゲームセンターを後にした。

琢磨も普通に戻ってる。

のぞみはホッとした。
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