友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
のぞみの頬に、一筋の涙が流れた。
この人は、真面目なんだ。
昔からそう。
真面目で、ちゃんと考える。
その場の雰囲気や、感情で流されることを、よしとしない。
「このままいると、俺はのぞみを独占したくなる。のぞみが離れて行くとき、俺はきっとお前を殺したいほど憎むようになると思う。そんなのもう、俺、いやなんだ。しんどいんだ。笑って暮らしたいんだ」
うつむき、つぶやく琢磨の声が震えている。
きっと、わたしは友達のこの人といられたら、毎日が楽しいだろう。
でもこれから先、わたしたちは私欲にかられて、泣いて、わめいて、求めて、はねつけられて、憎んで、
そして純粋に相手を思うことができたあの十代の三年間を、汚していくことになるのだ。
のぞみは、手のひらで涙を拭った。
今ならわたしも、言える。
友達として、一番言いたかった言葉を、この人に。
のぞみは琢磨のそばに座った。
黒髪に手を伸ばして、そっと撫でる。
「大丈夫。あなたはきっと、また人を愛せるようになるよ」
目の赤い琢磨が顔を上げた。
のぞみは微笑む。
「だから、わたしたち、別れよう」