友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
調味料も揃えなければならなかったので、結構な買い物になった。
全部を入れると、ブウーンという唸り声のような音しか入っていなかった空っぽの冷蔵庫に、新しい生活がぎっしりと詰まる。
のぞみはダイニングテーブルに、ビールとさきいかを並べる。
「それだけじゃ、なんかなー」
琢磨は手早くカルパッチョを作った。さっきのオリーブオイルを使って。
テーブルに出すと、のぞみの目が輝いた。
「すごいっ。料理すんの?」
「まあな」
琢磨はのぞみに「ひとつ食べて」と勧める。
「うまっ。まじ、三ツ星」
のぞみが尊敬の眼差しを向けてきた。それからすぐに、ビールをごくり。
「お前なあ。ビール入れたら味が台無しだろ」
「えー。ビールでもおいしいよ。ほら、桐岡も飲んで」
のぞみがビールを勧めるので、琢磨は試しにカルパッチョとビールの組み合わせで口に入れた。
「意外に、な」
「でしょ」
のぞみが得意そう。
真尋とだったら、必ず冷えたワインを用意した。彼女も料理をするから、一緒にキッチンに立って、いろいろ作った。
「桐岡?」
のぞみの声にはっと我に帰る。
「あ?」
「あ?じゃないって」
のぞみは琢磨の背中に回って、強引に椅子に座らせる。
「食べよ。どんどん」
そう言った。