友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
第3節
もらった離婚届は、あまりにも薄く軽い。
区役所の前で、琢磨は風の冷たさに首をすくめ、乾いた青空を見上げた。
コートのポケットの中の、二つのリングを指で触る。
ずっとポケットに入れたまま、結局のぞみの指にはめることはなかった。
琢磨は歩き出す。
二人で話し合って、年を越す前に届を出そうということになった。
あまり時間はない。
のぞみは部屋を片付け始めていた。
あまりにもあっけなく、短い結婚だった。
そもそも、無理な話だったのかもしれない。
のぞみが女性であるということを、ずっと見ないようにしてきた。
まるで男友達と二人で暮らすように、この先ずっと楽しいのだろうと、漠然と考えて。
一度のぞみを女性だと意識してしまえば、あとはいつもの醜い感情のやりとりが繰り返される。
結婚式場のトイレの鏡で見た、自分の醜く歪んだ顔を思い出した。
あんな顔を、のぞみに見せたくない。
そう思えば、この離婚は至極当然だ。