友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
重い足取りで帰宅した。
ドアを開けると、驚いたことに電気がついてる。
「お、帰って来た」
廊下を通ってリビングに入ると、キッチンから琢磨が顔を出した。
「遅いじゃん」
のぞみは「あれ?」と声を出した。
「ライン見てない? 今日は早いって送ったんだけど」
「……ごめん、見てなかった」
そういうと「まあいっか」とキッチンに戻る。
「夕飯食った?」
キッチンから声が聞こえる。
のぞみはコートを脱いで、カバンを置く。
「……食べてきた」
「そっか」
キッチンから拍子抜けしたような琢磨の声が聞こえた。
「じゃ、俺だけ食うかな」
「ごめんね」
あやまると、琢磨は笑う。
「いいって。俺がたまたま今日早かっただけなんだから。ハンバーグ冷凍しとくから、明日食べろよ」
「うん」
のぞみは無理に笑うと、ロフト下のクローゼットから自分の着替えを取り出した。
振り向いくと、琢磨がじっとこちらを見ている。
「……なんかあった?」
ダイニングテーブルに座りながら、琢磨が尋ねた。
「なんもないよ」
のぞみはそういうと、ロフトの階段を上る。
下に琢磨の気配を感じながら、のぞみは持ってきたボストンバックを開けた。
通帳を取り出し、開く。
毎月引き落とされる、借金の返済。
手取り15万ののぞみだが、返済額は月々6万。
かなりの痛手だ。
でもこれからまた、新しい返済が始まる。
琢磨には相談しない。
自分の始末は自分で。
それは昔から決めていたことだ。
ごくんと唾を飲んで、のぞみは通帳を再びバックにしまった。