友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

第4節


正直ホッとした。

琢磨はデスクに肘をついて、髪をかきあげる。

のぞみはあれから普通に戻った。
よく笑い、よく食べ、よく寝る。

部屋をノーブラでフラフラ歩き、ビール片手にあぐらをかく。

ホッとした。だって……。

『あいつは殴るし、横暴だし、でもわたしが女だってわかってやってる。あいつに支配されると、わたしが女だって初めて実感できるの!』

のぞみが叫んだその声に、心臓を鷲掴みにされた。

「これまで誰とも恋愛してないとは、思ってなかったけれど」

書類を手に持って、ぼんやりと考える。

のぞみのことならなんでも知っている気になっていたけれど、高校卒業してから今までは完全に空白だ。

その空白の間に、のぞみにもいろいろなことがあった。
そういうこと。

夜の7時。窓の外は真っ暗。

「帰ろうかな」
ボソッとつぶやいたのを聞きつけて、吉崎が身を乗り出した。

「帰るって言った? 仕事人間が珍しいじゃん」
「そうか?」

琢磨はパソコンをシャットダウンし始める。

「桐岡、変わった。すごい楽しそうだもん。結婚っていいの?」

そう言われて、少し考える。

帰っても、琢磨がご飯を作って、のぞみに食べさせるだけなんだけど。

「いいかな」
琢磨は言った。

「前よりずっといいよ」

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