友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
第3章
第1節
セミダブルのベッドの中で、目覚ましがなるのを待ち構える。
もう何度もスマホの時計を確認したから、あと少しでここから出なくてはいけないことはわかっていた。
琢磨は寝返りを打ち、頭上のカーテンの隙間を覗く。
青白い空が、朝を待っているのが見えた。
唇は、ごく自然に触れた。
『一生そばにいる』といってくれたその言葉とぬくもりが、琢磨を安堵させた。
友情に肉体的接触があるとしたら、きっとあのキスがそうだ。
でもそれは最初の一回だけ。
琢磨が引き寄せたあの首の細さ。
唇を開かせ、入り込んだのぞみの中。
あれはもう、友情のそれではなかった。
『友達になれたらよかったんだと思う』
真尋が言った言葉があの瞬間蘇って、琢磨はとっさに身を引いた。
ピピピピピ。
目覚ましがなって、琢磨はスマホを触る。
走るなら、この時間に起きないと間に合わない。
でもリビングに出て行くことが怖い。
リビングのロフトには、のぞみがいるから。
絶対にのぞみも起きている。
「いや、きっとロフトから降りてこない」
琢磨は意を決してベッドから身を起こした。
「走ろう」
そして立ち上がった。