友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
朝のランニングは、寝不足の脳に新しい酸素を送り込む。
品川という立地は、不思議な場所だ。
マンションや小さな民家が並ぶかと思えば、すぐに大きなビジネスビル街へと入り込む。
ビル沿いの大きな道には、まだ誰もいない。
飲食店もないからカラスさえない。
まだひっそりと眠る町。
はあはあと規則正しく呼吸しながら、ビルとビルの間から覗く空が、ほのかに色づき始めるのを感じた。
友情と恋は、どこが違うのだろう。
相手を大切に思うことは一緒だ。
でも誰かに恋をすると、瞬く間に感情は醜く歪んでいく。
今、のぞみと毎日笑って暮らせているのは、友達だからだ。
ほんの20分ほど走って、マンションへ戻っていく。
ポストを開けて中身を取り出した。
新聞にチラシ、それから一つの封書。
琢磨は裏を見て「もっちゃんか」と声を出した。