友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
琢磨とのぞみ、そして望月典子こと、もっちゃん。それから大崎隆(おおさきたかし)の4人は、3年間ずっと同じクラスで、自然とつるむようになった。
男女ともに二人ずつだけれど、不思議と誰もその中で付き合うことはなかった。
卒業後、琢磨だけ大学へ進学。のぞみは地元短大。他の二人は専門学校へ行った。
本当に見事にバラバラで、徐々に連絡も途絶え、今もっちゃんと大崎が何をしているのかよく分からない。かろうじてFaceBookで繋がってるのみだ。
「あっ! スープスープ」
キッチンへ駆け込むのぞみの背中を見て、そういえばのぞみとは本当に音信不通だったことなと思った。
だからあの場所で偶然再会できたことは、とても不思議な縁だ。
「実家に聞いてみろよ、招待状きてるか」
「うん」
のぞみがガチャガチャとお皿を出している音がする。
「サーモンピンクのワンピでいいかな?」
トレイにいろいろ載せて、のぞみが出てくる。
琢磨はそれを受け取って、ダイニングテーブルに並べた。
「あれ着るの? やめろよー」
「どうして?」
きょとんとした顔でのぞみが尋ねる。
「のぞみらしくない。もっと綺麗にできるよ」
琢磨は言葉にしたとたん、なぜか胸がまたざわざわと鳴る。
のぞみは琢磨の様子に気づかない。
どかんと椅子に座ると、手を合わせた。
「いただきます」
のぞみはそう言うと、スープを一口。
「うまい!」
琢磨も席に座って、食べ始めた。
「俺が買ってやるよ、ワンピース」
「いいよお。サーモンで」
「だめだって」
パンをちぎり、ちょっと黙る。
自分でも、なぜ「だめ」と思っているのかわからない。
「サーモン、禁止な。新しいの買うから」
琢磨はそう宣言すると、パンを口に放り込んだ。