友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

のぞみがいつも通り接すると、琢磨は明らかに安堵した。

真面目な琢磨のことだから、一晩中眠れずにいたに違いない。
のぞみも、それは一緒だったけれど。

のんびりしたお昼下がり。
ガラス戸から暖かな光が入ってきて、室内はぽかぽかだ。

社長はこの時間、必ず二階の自宅でお昼寝をする。奥さんとのぞみはその間二人きり。

「のぞみちゃんの旦那さん、すごくいい男ねえ」

この間琢磨がここに来たときから、ことあるごとに言ってくる。

「あんな旦那さん、見せびらかしたいだろうに。なんで結婚式しなかったの?」
「二人ともこだわらないんですよ」

奥さんは、はあーっと、あからさまなため息。

「のぞみちゃんのドレス姿、見たかったわあ」

そう言われて、のぞみは自嘲する。

自分がドレスをきて、琢磨の隣に立つことなど、想像できない。
似合わないことこの上ないし、何より二人は友達だから。

そこに、のぞみのスマホがなった。

一瞬、涼介からかと身をこわばらせる。
でも表示を見て、肩の力が抜けた。

「母からなんですけど、いいですか?」
「どうぞどうぞ」

奥さんはまったくこういうことに厳しくない。
それがお給料が安くてもここをやめない理由の一つだ。
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