友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

マンションに戻る頃は夕方。

のぞみはカーテンを引いて、電気をつけた。
それから紙袋をソファにドサンと勢い良く置く。

「ハンガーかけとけよ」
琢磨が、相変わらず細かいことを言う。

「あとで」

のぞみは急いで洗面所に入る。

髪をまるでちょんまげのようにまとめて、メイクを落とした。
ブラを外し、よれたスウェットに着替える。

早く。
一刻も早く、いつもの、だらけたわたしに戻らなきゃ。

リビングに戻ると、琢磨がすでに袋を開けていた。

ノースリーブの濃紺トップスに、淡いベージュのシフォンがついたロングスカート。
サーモンピンクのワンピースが愛らしいデザインなら、こちらはクールなイメージ。

「のぞみが持ってるカーディガンで合うか見れば?」

琢磨が、すっかりゆるい格好になったのぞみを見て言う。

「今?」

のぞみが尋ねると、琢磨は「まったく」とため息をついた。

「すぐにいろんなこと後回しにすると、いいことないぞ」
「へーい」

のぞみはロフト下のクローゼットから、自分のカーディガンを取り出した。
ZARAで買った、一張羅だ。

「これ」

ジャケットを脱いで白いシャツになっていた琢磨に見せる。

「着てみなきゃわかんないなあ。着ろよ」
「今?」
「今!」

のぞみは周りを見回した。

「だって、ここ姿見ないじゃん。洗面所は上半身だけしか見えないし」

すると琢磨が「そういえばそうだな」と気づいた。

「俺の部屋にあるよ。っていうか、今まで全身をチェックしないで、外でてたのか?」
「へへ」
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