友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~
午後三時ごろから、ガイドブックを片手に市内をうろうろ。
渇いた風が吹く街を歩く。
一つを二人で分けて、なるべくたくさんのお好み焼きを食べ歩いた。
有名店から、飛び込みの店まで。
「わたし、麺がたくさん入ってるのがいいなあ」
道の真ん中で、のぞみはガイドブックを見ながら言った。
「まだ食うの? 俺もう、吐きそうなんだけど」
「えーっ」
のぞみは抗議の声を上げる。
「まだかき鍋も食べたいのに」
そう言うと、琢磨が「げ」と顔をしかめる。
それから「なんでのぞみは大食らいなのに、そんなに痩せてんだ?」と首をかしげた。
「なんでかなあ」
のぞみもわからない。
「昔からそうだよな。四人の中で、一番食べてた」
琢磨はそれから「明日は、大崎来るのかな?」と言った。
「さあ? 琢磨は連絡とってんじゃないの?」
「俺は住所変更のメール送ったけど、あいつから返信ないから」
「ありゃ」
そう言ってから、のぞみも大して変わらないことに気づく。
ここなん年も、高校時代の友達と連絡を取ってない。
「大崎も、いろいろあんじゃん?」
のぞみは言った。
「誰もが胸を張って生きてるとは限らないし。そんなとき、十代のときの友達になんて、会いたくないよ」
琢磨は黙ってのぞみを見る。
そこで、のぞみは自分が余計なことを喋ったと、気がついた。
「まあ、みんながみんな、わたしみたいに卑屈になってるわけじゃないと思うけど」
慌ててそんな風にごまかした。
「俺は東京の大学に行って、距離的に離れたから余計に連絡を取ろうって思ったのかもな」
琢磨が言う。
「そうかも」
同意すると、琢磨はのぞみをじっと見つめた。
のぞみは落ち着かない。
「そういえばさ、のぞみが俺に東京の大学受けろって言ったんだよね」