友情結婚~恋愛0日夫婦の始め方~

しばらくすると、式が始まるアナウンスが流れ、厳かなオルガンが教会の中に響き始めた。

「はじまる」
「うん」

三人とも体をねじって後ろを向くと、両開きの扉が開き、中から真っ白なドレスをきたもっちゃんが出てきた。
当時家に遊びに行ったとき何度か見た、お父さんと一緒に。

「きれい」
のぞみは思わずつぶやいた。

もっちゃんは、四人の中で唯一女子だった。
だからみんなが苗字で呼ばれる中、一人だけ「もっちゃん」と愛称で呼ばれていた。
おしゃれもするし、爪も整える。
彼氏が途切れたことはなかったし華やかだったけれど、不思議とのぞみと気があった。

三人の横を通り過ぎる時、もっちゃんがこちらを見て微笑んだ。

もっちゃんの旦那様は、歴代彼氏の中でも一番地味な感じだった。
加えて言えば多分結構年上で、黒縁メガネをかけた姿勢のいい人。
どうやら、学校の先生をしているらしい。

牧師様の前で指輪を交換し、ぎこちない手で旦那様がもっちゃんの白いベールをあげる。

「もっちゃん、泣いてる」
琢磨が小さな声で言った。

「うん、うれしいんだよ」
のぞみはそう返した。

誓いのキスを交わすと、祝福の拍手が起こった。

「芹沢もこれ見たら結婚したいんじゃないか?」
大崎が言う。

「わたしはいいよ。こういうの似合わないから」
のぞみは笑顔を作ってそう言った。
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